Monthly Archives: July 2014

コーマック・マッカーシー「ザ・ロード」より

かつて渓流には川鱒が棲んでいた。琥珀色の流れの中で緑の白いひれを柔かく波打たせている姿を見ることができた。手でつかむと苔の匂いがした。艶やかで筋肉質でぴちぴち身をひねった。背中には複雑な模様があったがそれは生成しつつある世界の地図だった。地図であり迷路だった。二度ともとには戻せないものの。ふたたび同じようには作れないものの。川鱒が棲んでいた深い谷間ではすべてのものが人間より古い存在でありそれは神秘の歌を静かに口ずさんでいたのだった。

Baby Blue

Baby Blue 定期的に聴きたくなる、フィッシュマンズの「Baby Blue」 オリジナルはもちろん、曽我部恵一のカバーも出色。バイクで家に帰る信号待ち、向こうでぼんやりしている人たちを眺めながら口ずさむ。交差点の向こうで手持ち無沙汰に顎を上げる彼ら彼女らはどこか、理由のわからないなにかに戸惑っているように見える。でもそれは信号が変われば消えてしまう戸惑い。歩き出せばなかったことにされてしまう。長い上り坂を這う私の原付は非力で、乱暴な運転手に煽られたりする。泣きそうなこともあるし、知らないふりをすることもある。