うすいベニヤを箱に作って青い時化を囲っている。
湿ってだぶついた段ボールにも、夜電信柱につながれた山羊が入ってる。
外灯下羽虫点、ガードレールの
冷たさ。手に付く粉と、板も段ボールも冷えて。
山の上から渡ってくる、抱えるほど大きな蛇腹の排水管を下って
(それは実際入るというより「そのつもりになって」蛇腹の外側に手をかけることになる)
夜に下りて行ける。おびただしい色の集合としての黒は
死んでいくとは夜になる所作だと示すだろう。
そこで会う、今はない人に
足裏から掻きずる海鳴りで叫ぶだろう。
身体に抱きついたまま
首を歯で噛みつくだろう。ことばはもう
色を重ぶたせ過ぎたから。足を何度も
踏み鳴らし踏みつけ、この
夜底こそ時化。
わたしは水気で重い段ボールから山羊をこぼさないし、
白波はベニヤ板からあふれない。それは
身体の線から外へは出ないで、指の先
白くしたまま山の道、出くわす山羊と排水管。
髪は青く、今は
夜。歯の
顔色。