おチビがやってきて以来、夏がくるたびに走りはじめている。あせも対策の空調がからだを冷やすうえ、真上から落ちる霞んだ光が撮影意欲を削ぎ、からだがなまってしまうから。
八月の上旬にはふくらはぎの芯が重くなり、肩から首にかけてがだるくなる。体のいうことを聞いてやらなければ、と中旬にはランニングシューズを下駄箱からおろす。走りはじめは膝が痛むし呼吸のリズムも整わないが、かまわず続けていると二週間目あたりでスパートをかけられるまでになる。そうなればもうしめたもので、生活のサイクルにジョギングがとりこまれ、隙を見てランニングウェアに着替えるのももどかしく玄関を飛び出してゆくようになる。
今年の夏はいってしまったけれど、ランニングは続ける。体力維持のためもあるが、なにより精神的な安定をもたらしてくれるから。僕は基本的に気弱で物事を悪く捉えがちな気性だが、走りはじめてしばらくすると、悪循環の蛸壺にはまることがなくなり、基準点まで持ち直すことができるようになった。できないことを受け入れつつ、できることをこつこつ続けられる。特別に幅の広いアシックスのシューズもぴったりしていて、いい気分だ。