この度、PORT ART&DESIGN TSUYAMAでは、写真家 森下大輔氏による展覧会を開催致します。
2005年「重力の様式」を皮切りに、6x7フォーマットの中判カメラを主に使用し、フィルム撮影~暗室プリントの作業を中心に制作を継続されています。
当初は風景を中心に、光の美しさをストレートな方法で撮り続けて一定の評価を得ましたが、近年ではそこにとどまることない実験精神を発揮し、暗室作業における現像ムラや長時間露光、逆光によるフレア、アウトフォーカスやドキュメントフィルム、赤外線フィルムなどに積極的に取り組み、制作の幅を広げています。そこから生まれる作品はデジカメで気軽に撮れるようになった昨今の写真とは少し違い、フィルムに収められ、暗室の中から立ち現れるという時間的な距離や、偶然性を誘発させる過程がブラックボックスとして機能しているのです。
一聴して不思議な印象を受ける「写真が写真を生み出す」という氏の発言は、写真が現実の似姿として一般的な意味や価値観と交換され、消費されるのではなく、それとは異なる場所、現実の外部から立ち現れることを期待してのものです。この「写真原理主義」とも言える信念こそ氏を支える強い力となっており、作品制作の羅針盤としても機能しているのです。
私たちの身辺にある見慣れた景色。どこにでもある木、人々の生活や建物、空に浮かぶ雲。平凡で自明な現実に正面から相対した時、私たちはそこに、私たち自身が社会の中で何者かを演じ始めるまえに持っていた、素朴で純粋な視線を発見します。そんな視線からこそ、新しい詩情や観念が生まれてくるのではないでしょうか。
今回展示される「Shadows of Light」は、氏の主宰するasterisk booksでの二冊目の写真集にあたり、今後の活動の幅の拡がりを予感させる重要な作品となります。是非、ご高覧ください。