幾つかの場所を巡って、15枚ほど写真を撮る。対象の幅が無限遠から数センチまで広がったのに対応すべくここしばらくマクロレンズを常用してきたが、最近気に入ったフィルムの感度がISO12と随分低いので、晴天の日向でレンズを開放にしてシャッターを切ることになり、ファインダーを覗いた時の心地良さを優先してDallmeyer 4 1/4″を持ち出した。
見えは美しいものの標準の視覚より少し拡大される画角は、画面をほんの少しだけ批評的に感じさせて苛立たしい。時に絞り込んだり、接写する必要を感じることもあろうかと三脚やヘリコイドエクステンションを携行しているが、単純な視覚とそれをものにする切実さを測るのに精一杯で、被写体が持つ情報を再現することには気持ちが向かない。
とある日曜日、何も撮るべきものがない空間に首を巡らせ続けていると「私は写真を撮っている」という前のめりな心持ちが徐々にほぐれ、現実に居ることに沿うようになる。そんな気だるさに沿いながら凪いだり滾ったりした。