「雨見する。」
道路に落ちた雨、雨一滴の中に生きている時間が見える風景だ。
干して小さく切った餅よ揚げて、おかき作ってくれ。それを持って、星から沖の波一番遠い指先まで行く。
一滴背中をまるくして、滴のまるさに近づいて年をとってくれ。時時には
飯を噛ませるさじよ振って、ことばと
ことばが育つ厚ぼたいだんまりを交ぜてまた、
この小さい口に放り込んでくれ。
子ども。風景は途方もない、おびただしい記憶の方法そのものだ。
どんな織られ方をして滴の形は、濡れる花はこの花なのか、ひたすら見とれている
わたしたちの死ぬる、忘れてしまうをも軽く上等な糸にして、今一滴は織られていないか。
わたしは子ども、おまえに放り込む飯、行こう星、さわる波の指触りも不思議。雨よ
雨、見とれるばっかり、おまえは行く背中、
滴、わたしが映る、さじなく。さじなく。
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清水あすか「空の広場 14号」より